□□昨日のつづき□□
2003年9月15日号 VOL.032
──良い革製品を考える(10)──
良い革製品とは何か?を、原皮・鞣し・染色について考えて来た。
革の良し悪しを、消費者が一目で見抜く事は難しいが、このコラムの
読者はおぼろげかも知れないが、見分け方の手段を手に入れたと思う。今号からは、組み立て・縫製など製作現場について考えて見よう。製品となったBagや靴・財布類をチェックして、職人の技術やメーカーとしての姿勢を判断する事は、見るべきポイントさえ知っていれば、革の良し悪しを見分ける事より数段容易だ。 その第一段階として職人やメーカーの心理面を考えて見よう。
作り手にとって、いつも悩んでいる事がある。 「最高品質の素材を吟味した上で出来る限りの手をかけてやりたい」気持と、「原材料費を抑えたい、製作コスト=時間を縮小したい」気持ちとのカットウだ。 しかし、これは絶対的な矛盾と言うものであり許せる範囲の素材で、目をつぶれる程度に技術を加えるなどと言う現実は有り得ない。
必然、どちらかに決定的に片寄るものであって、一方は作品的方向に進んで行き、他方は流通商品となって行く。
現存の商品は、このどちらかしか有り得ない筈で判断もし易い筈なのだが、消費者を惑わす最大の原因は<売価>にある。換言すれば作り手の設定する<掛け率>にある。
掛け率は、問屋の利益や百貨店・小売店の利益の他、流通費・営業経費・広告宣伝費・販促費・売れ残り危険率などメーカーそれぞれの要因によって異なるが、平均的には原価×2,5~4,0程度であろうか?(筆者の知っている中で、国内某メーカーの10,0などと言う法外な掛け率もある事はあるが・・・)
具体的に書こう。 例えば、常時 雑誌などに露出する掛け率10,0のメーカーの\50,000のBagの原価は\5,000だ。 対して、直営店のみの販売を行うメーカーが前述した中間経費は一切かからない為、掛け率1,8に設定したとすれば、この会社の\50,000のものは、\28,000のコストが費やされている。 コスト較差は6倍近い。
問題は、Aメーカーの(5,000×10,0=\50,000)の商品と、Bメーカー(20,000×1,8=\36,000)の商品を比較して、3,6万円より5万円の方が、きっと良いものだろうと思い、タレントの△△さんも持っていると安心する人が多いという事実である。
見分けるべきポイントを知っている重要性がここにある。
次回より、このポイントについて具体的に述べる。
(F)
──次号につづく─