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VOL31 ─良い革製品を考える(9)─

□□昨日のつづき□□

2003年9月5日号  VOL.031

──良い革製品を考える(9)──

フリーハンドのアトリエに「職人になりたいので雇ってくれ」とのTelやMailが時々来る。 言い方を換えると「鞄づくりを教えてくれ」との事だ。 27才ぐらい迄の方なら面接をするが、それ以上の方は全てお断りしている。 職人の修行は、若ければ若い程良いのは自明の理だ。 基礎を叩き込む時間がある。

 20代後半や、まして30才代の人に修行の時間が足りないと言うのでは無い。
革が好き・鞄や靴が好きと言った嗜好を既に持っているし、御社(F.Hの)製品の良さが分かるとか、モノづくりの姿勢に共感するとか言った判断力まで手に入れている。
扱うべき素材が決まっていて、比較の上で良し悪しが見分けられ、職人として生きる自覚を得たのなら、すぐにでも材料を買いに行き、自宅で作り始めれば良い筈だ。
学校を探す事も、工房を見つける事も不要だ。 基本的な作り方は、本屋へ行けば、充分に足りる。

 これからの時代の鞄づくりや靴づくりは、徹底的な造形・デザインが勝負だ。 又は、他社の追随を許さない技術に裏打ちされた顧客の信頼が必要とされる。 日本国内の人口は減り続けるし、まして中国やロシアへの輸出まで考えれば、量産大衆品を作る職人に将来は乏しい。 それならば、既製の工法に影響されずに、独学で自分だけの手法でモノづくりを始めた方が、余程、明るい未来が開ける。

 前出Vol17「サントリーレッドの呪い」で書いたように、私達フリーハンドは師匠を持たずにアトリエを開いた。 見学に来る他社の職人達が不思議がる程、独特の作り方をしている。 楽に作れる工法を習わなかったからだ。 しかし、それが独自のスタイルとなり、同時に誇れる自信ともなっているのだ。

                                   (F)
                             ──次号につづく─