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VOL16 ─日本文化を輸出する─

□□昨日のつづき□□

2003年3月15日号  VOL.016

──日本文化を輸出する──

 十年・二十年程前、日本は輸出する製品の高品質・廉価をもって米欧を席捲し、「日本の経済的侵略」と各国は論評した。  日本人は「エコノミック・アニマル」と呼ばれ、「Japan as No1」など日本関連の書籍がベストセラーになっていた。

 当時、外国人と接する機会の多かった筆者は、上記書籍の「is」では無く「as」である意味を考えていた。  たどりついた答は、外国人から見た日本人が個人を会社の中に埋没させて、ただひたすら利益のみを追求する集団行動型の人間であって、楽器を操る事も詩を吟ずる事もない非文化的人種に思えているとの事だった。

 仕事一辺倒で趣味も無く、休日には家でゴロゴロするしかない生活スタイルは不況に喘ぐ現在も全く変わっていない。  外国人の休日が友人達とのホームコンサートであり本格的なスポーツへの参加だったりを見ると、その環境が本当に羨ましい。

 外国人と話していると、それぞれ自国の<文化>について熱心に、そして楽しそうに誇らしげに語り始める。 翻って日本人を考えると、彼等の国に負けない程の歴史と世界に誇れるべきものは充分持っているのだが、悲しいかな自分の国の<文化>を語れる程の知識を殆んどの日本人自体が有していない。

 茶道・華道から能・狂言・歌舞伎、歌道・俳句、大衆芸能の落語・浪曲・講談、あるいは外国人の興味を示すサムライ・武士道や柔道・相撲、和服様式や陶器・漆器に至るまで、何時間でも何日間でも語るべき「日本」はある筈なのに語る知識が無い。
外国人から歌舞伎の様式美を説明された時・・・・は、何のような顔をしようか。

 ──我々が「ビートルズ」のCDを何れ程買おうが、「スターウォーズ」を何回見ようが、高額な受信料を払って「M・ジョーダン」に夢中になろうが、その流出する外貨が何れ程であっても、我々は英国や米国に経済的侵略を受けているとは思わない。同じように、日本の文化を津波のように輸出して稼ぎまくっても、世界中から称賛される事はあっても非難を受ける事は無い。摩擦を生ずる事も無い。

 前号で触れたように、生産立国であるべき日本の、生産担当者である職人はこの日本文化を背景にした物づくりをこそ目指すべきであって、外国の模倣を器用にこなす事が正しいのでは無い。
このような模倣傾向は、革の業界で靴づくりに多く見られる。 技術を習得した職人が英国調トラッドに如何に近づけるかに腐心し競い合っているが、それでは将来は無い。又、そのようなメンズ・トラッドのチェーン店に心酔している成人男性を良く見かけるが、情けないとしか言いようが無い。 あえて成人と書いたのは、自分で判断出来ない中高生ぐらいの時なら、例の<ウンチク・能書き>を聞いておくのも良い経験かなと思う程度の事。

                                   (F)
                              ──次号に続く─