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VOL15 ─職人体験実習─

□□昨日のつづき□□

2003年3月5日号  VOL.015

 ──職人体験実習──

 3年程前より「1日職人体験」を行っている。
もともとは、雑誌「ガテン」より依頼されて始まった企画なのだが、文字通り革職人を志望する若い人達に1日アトリエの作業を実習させて<職人とは何か>を実感してもらおうとするものだ。

 年間2~3回不定期に実施しているが、毎回体験希望者の応募が40人から多い時は100人を越える。  雑誌掲載時は取材の関係もあって1回に2人ずつしか行えないので、熱心な志望者には当社独自で4~5人ずつ体験入門させている。
 不況の所為で<手に職をつけたい>のであろうか、皆一様に熱心である。しかし、彼等の話を聞いてみると「職人」に対するイメージがどうも一律一様なのである。  TVで映し出される工芸家達の、凛とした空気の中で黙々と求道者の様に
手を動かし続ける姿を思い描いているのであろうが、職人を美化して考えてないか。

 反面、年収や休日など労働条件はやはり気になる様で、「修行」と「就職」は別のものだと説明しても釈然としない顔をする。  職人志望の動機を聞いてみると本音のところは「人と話すのが苦手」「競い合うのが嫌い」など逃避型か、「世界にデビューするデザイナー」を夢見るスーパースター思考型が多いようだ。

 ──産業の空洞化が言われてから随分と時は流れた。  生産手段の多くは中国など海外に流出した。  革業界だけでなく、多種多様の町工場が廃業に追い込まれた。  これからもこの流れは続いていくだろう。
しかし、元気な職人さん達も大勢いる。  何が違うのか?

 日本という国の将来と、日本人の持つ民族的な資質を考えた時、この国は「金融」や「外交」やましてや「軍事」などで国を成り立たせるべきでは無いと思う。
日本は<生産すること>を捨てては成り立たない。
今こそ、職人が為さねばならぬ事がある。

 日々の研鑽に裏打ちされた絶対的な技術が前提となるのは当然のことだが、産み出される製品に、如何に<付加価値>を与えるかに尽きる。<付加価値>とは何か?  一方では、発想力と工夫で他国の模倣を許さぬ高みに立つことであり、また一方では磨きぬいた感性で造形や色彩に独自の個性を持つことである。

 たくさんの本を読むこと。音楽を聴くこと。友と語り合うこと。美味しい食事をすること。お洒落をすること。  毎日毎日の積み重ねが発想する力をつけ、感性を鋭くすることにつながる。  つまらないメールのやりとりなどしている暇など無い。

 与えられた仕事を、売り渡した時間の中で、黙々と作業しているのは<職人>とは呼ばない。  そして彼等に明日は無い。

──3~4月に「職人体験」行います。 希望者はメールどうぞ。──

                                    (F)
                               ──以下次号─