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VOL70 ─さくらが咲いた─

☆☆☆ フリーハンド ☆☆☆

2011.04・08

━━━ さくらが咲いた ━━━
コラム「昨日のつづき」  Vol.70

 

今年もさくらの季節になった。
東京の桜は今週末から来週にかけて満開になるそうだ。
でも、今年は例年と違う感慨に浸ってしまうのは避けられない。 未曾有の大災害だったのだから。

何の本だったかは忘れてしまったが、桜は人の魂と怨念を根に抱いて咲くのだと書いて有った記憶がある。

平安時代の流浪の歌人・西行法師は武門の名門名家に生まれた地位を捨て、突然出家して東国への旅に出るのだが、
世に言う失恋による傷心の出家だとか、平清盛とのあつれきに破れてのものではなく、朝廷の命による、平将門を始めとする怨霊の「魂鎮め(たましずめ)」が本来の目的だったと言うのだ。

戦場になった地や罪人として処刑した死体を埋葬した場所に、さくらを植樹し鎮魂を行ったと書いて有ったと思う。
関東・東北地方に点在する桜塚と西行の工程が一致するのだそうだ。 さくら塚とは文字通り人を埋葬した塚である。
当時のさくらは当然”山桜”だったろうが、西行は辞世の歌を始め”さくら”を詠んでいる歌が多いのも、その関連なのかも知れない。

4月末から5月にかけて被災地域にも、さくらが今年も咲くことだろう。
願わくば安らかな鎮魂と、命の助かった方達への明日への希望を与えるような美しさであって欲しい。

被災をまぬがれた私たちは、こころ静かに花見に出かけようと思う。
東北地方の酒を買い、松島産の牡蠣や石巻の笹蒲鉾は手に入らないだろうが、出来る限り被災地産のツマミを揃え、可能な限り福島産・茨城産の野菜を使った料理を持って・・・・。
最初の乾杯は犠牲者の献杯に変え、カラオケの代りに「自分たちに何が出来るか」を話し合いながら酔いたいと思う。
( F )