このサイトでしか手に入らない手作り品です(詳しくはInformationをご覧ください)

VOL62 ―バーゼル(国際時計見本市)情報―

☆☆☆ フリーハンド ☆☆☆      2009.04.09
【バーゼル(国際時計見本市)情報】  その①
コラム 昨日のつづき Vol. 62の1

 毎年3月末~4月のこの時期、スイス・バーゼル市は2009年の新作モデルの展示と商談で世界中のバイヤーが訪れてにぎわいを見せる。
しかし、世界的な不況の影響か、ここ10年の中では人の出も少なく総体的には寂しげな印象であった。
メインの展示館の入口近くのブースは、ピアジェ・パティック・AP・コルム・ロレックスなどが定位置を占めてはいたが、プロのバイヤーと真剣なやりとりをする姿も少なく、ついでに言うと、2Fのシャネルやエルメス・ブルガリなどの高級ファッション時計のブースも、2号館の宝飾系の展示会場も似たようなものであった。

 今年の全体的な特徴を言うと、斬新な話題になるようなデザインは何処にも無く、ダイヤル(文字盤)やべぜル(風防ガラスまわりの金属枠)を色変化させているだけの、平板なものが多いようだった。  新作のデザインに社運を賭けるといった意気込みは、現在の状況からは難しい事なのかも知れない。
前出の超高級時計ブランドでも例外で無く、見なれたモデルが赤や青など色違いで作られていた。(限定数モデルとして有った事から見てコレクター向けであろう)

 スイスの時計業界は、スオッチを除きクオーツからは一段と離れ機械式時計に明確に傾斜しているが、「機械式」で有る以上、デザインは行き尽くして、形状などはこれ以上の進化は無いとの事かも知れない。
3~5年ほど、フランクミューラーを代表とする「トノー型」も、ハッキリと飽きられたような感じである。  この1~2年主流の50mmを超えるような「ビッグフェイス」は今年も各社とも展示していたが、ダイヤルもべぜルもケースも剣(長針・短針・秒針)も全てブラックのグラデーションで作られた「ブラック/ブラック」シリーズが多く、ほとんどのメーカー共、出品していた。  蛇足だが、もし、購入希望の読者がいたら、ブレスレットまでブラックにはしない方が良いであろう。
黒メッキは金属と金属が擦れて必ず剥げる。  PVD加工(ダイヤモンド加工メッキ)などの物も、高額なだけで、いつかは剥がれる。
第一、すべてブラックの時計など時間が読み取り辛くてならない。(歳のせいで目が悪いんじゃ・・・なんてツッコマナイ事!)
だから、取引契約はして来なかったが、どうしても!と言う方はご相談下さい。

━━ 明日につづく ━━ (K)

 
 
 

☆☆☆ フリーハンド ☆☆☆
【バーゼル(国際時計見本市)情報】  その②
コラム 昨日のつづき Vol.62の2

 展示ブースで最も大きいスペースを有していたのは、当然ながらスオッチグループである。
オメガ・ハミルトン・ラドー・ティソなど十を超えるブランドを買収し、ムーブメントメーカーであるETA社も傘下に抱えて、その影響力は巨大なものになっている。
従って、グループ内で価格帯が競合するブランドが並立する事態となり、注意深く観察していると、交通整理が始まっているようだ。
例えて言えば、同じエンジン同じシャーシを使っていても少しづつ顔が違って、カローラよりマークXは高価でマークXよりクラウンは高く、クラウンよりセルシオは高級といったような自動車メーカーのワイドセレクション戦略のようになって行く事だろう。  どのブランドがどの価格帯に収れんされて行くのかはいづれ明らかになると思う。 
このグループは時計をビジネスで割り切り投資対象として位置づけている。  ファッションブランドを買収していくのもその理由だ。 
スイスの時計業界自体がドライな風潮で、創業一族が引き続き経営に参加していること自体まれな事で、超有名ブランドの経営が米国・イタリア・ドイツ・香港などと世界中を渡り歩いているなんて当たり前の世界なのだ。 

 10年ほど前から、「AICHI」と呼ばれる独立時計師の展示場が出来ている。
文字通り、独立した時計職人達だ。  彼らは金属加工から研磨・組み立てなど全て自分の手でやってしまうクラフトマンだ。
だから一つ一つがオリジナルであり、ケースやベゼルに龍や女性の顔などと言った彫金も施すので特注も受けている。
当然ながら、引き受けるのは貴金属加工が中心なので、価格は一つが1,000万単位の特注品である。 
有名なハリウッドの俳優やミュージシャンが客には多いようだが、例の将軍様からも2~3個頼まれたらしい。  日本の某タレントもバイヤー経由で注文しているそうだ。 
興味があれば、旅費・宿泊費・飯付き・通訳料込みでご案内申し上げる(笑)。

━━ 13日(予定)に続く ━━ (K)

 
 
 

☆☆☆ フリーハンド ☆☆☆

【バーゼル(国際時計見本市)情報】  その③

 さて、そろそろ「本題」に入ろう。 もちろん今年の「グリシン」「L I P」「ユンカース」などの2009年モデルについてである。
今年の一押しは「ユンカース」です。──現在のルフト・ハンザ航空の前身でも有ったユンカース社は米国ダグラス社と世界の飛行機技術の先端を競ったヨーロッパを代表する航空機メーカーであった。 第一次大戦の敗戦で解体されたが、第二次大戦で甦り、連合国を恐怖に陥れた戦闘機を作りだす。 ふたたびの敗戦で技術は散逸してしまい、ルフトハンザ航空に引き継がれるが、「ユンカース」自体はコクピットイメージの「時計」を作りだす事で現在ファンを広げている。──
今年は創業150年の記念年のようで、飛行船ツェッペリンの時代のシンプルなコクピットデザインを思わせるモデルを発表していた。
ビス止めされた角型のべゼルの内側にドーム型の風防をつけた、いかにも機能的なデザインのものであった。   クロノ手巻きは7~8万円台、オートマチック自動巻きは4万円台、クォーツタイプは2万円前後~と、高額化しているスイス業界の中では、かなり目立つ程のリーズナブルな印象であった。
5月の連休後あたりから入荷する予定なので、是非楽しみにお待ちして頂きたいと思う。

━━ グリシン・L I Pは次回に続く━━ (K)