□□昨日のつづき□□
2004年11月5日号 VOL.046
──TV通販──
夏の頃、東京キー局の通販番組から出演依頼があった。
この番組の中で扱うイタリア製クロコダイルのBagについて、視聴者に安心感を与える役回りで、既に台本も出来上がっていて、その内訳は次のようなものであった。
(1) イタリアの風景とミラノを中心とした街のおしゃれなイメージ画像
(2) 当地の工房の歴史と、厳選された素材と丁寧な作りの紹介
(3) 進行係と女性タレントの掛け合いデザイン性に優れているとのトーク
(4) 日本のかばん業界のオーソリティーからのお墨つき
(5) 売価の説明と買い方
このように進んで行き、当然、私の出演シーンは4番目である。
驚いた事にセリフも決まっていて、大別して3つある。
「これ程の素晴らしい革は、日本では殆んど手に入らない」
「このような技術は日本では無理です。さすがイタリアの職人だ」
「100万円出しても、手に入らないものでしょう」
勿論、この出演依頼は断るのだが、その前にTV局のスタッフは私の所へ来た事を後悔したかも知れない。 商品を4点手にとって、次のように判定したからだ。
「このうち1つは、クロコダイルではありません。 アリゲーターです」
「縫製も仕上げも、日本の職人と比べたら、中の下です」
「良いところ、10万円台後半の商品です。 高く売っても28~9万円」
出演料は聞かなかったが、何れ程貰ったって受けられる話では無い。全く、天下の某局ともあろうものが、金さえ儲ければの傾向が情けない。ワイドショウは、ブランドバッグのバーゲン情報ばかり垂れ流すし、TVメディアは社会の木鐸たれとは言わないが、社会の公器たろうとの自覚が持てないものか。
先日、この番組が放送された。 私の代わりにY市の工房のオーナーが出演していたBagの値段は60~80万円していた。 何れぐらい売れたか、結果は知らない。
──次号につづく── (F)