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VOL 4 その1(メンテナンス)/ その2(オイルレザー)

□□昨日のつづき□□

2002年10月25日号  VOL.004

その1 (メンテナンス)

このところ、BAGのメインテナンスに対する相談が続いている。
殆どが5~10年前に作られたもので、圧倒的に「カビが生えた」が多い。次に多いのが「ストラップの付け根の革が切れた」だ。 相談者の90%は女性である。 そして、これらは日頃の注意で防げるものである。

持ち込んでくる時の決まり文句は、「こんなにひどくなっちゃったんです」だ。私はいつも「こんなにひどくしちゃったんですだろッ」と答える。心の中で─自分の顔ばかり、スキンケアしやがって─と思い乍らである。

SHOPでは、(オイルレザーは丈夫な革ですから一生使えます)(革製品ですから年2度程の手入れが必要です)(お持ち下されば、何回でも無料で手入れします)(忙しくて来られない時は、せめて空拭きして下さい)と必ず言っているし、「HOW TO TAKE CARE」の小冊子も渡しているのに、前述の方達は、全く忘れているようだ。それとは逆に、ミンクオイルを入れ過ぎて革が柔らかくなり、変形の原因を作っている人も時々、いる。 これは男性に多く見られる。

根本的に<革>に対する知識が乏しいとの証拠だろう。
世界中のあらゆる民族の中で、唯一日本人だけが<革文化>を有していない。長い歴史の中で、肉食する事を何処か忌み嫌い、獣の皮を身に着けることをタブー視してきた珍しい民族である。 草履、下駄、風呂敷文化から、靴、鞄主体に移行してわずか50年足らずの国だもの。 原始時代から数千年、肉食し革を利用してきた多民族に比べて<革の知識>が無くって当たり前か。

でも、フリーハンドの革製品を使う人達だけでも、正しい知識を持っいて欲しい。HPやメルマガに、これからも沢山発信していくので、継続して読んで欲しい。少なくとも<職人の会社>は、レトリックを駆使し、嘘までついて、モノを売ろうとしている某社とは違うのだから。
(F)

その2 (オイルレザー)

フリーハンドは何故<オイルレザー>の専門店なのですか? とのメール問い合わせが来た。 あまりにも単純な質問だったので、「装飾品としてのBAGでなく、道具として使われる革製品に於いては、堅牢さと、使い飽きのこない革の変化の美しさが最も重要な要素であり、この2点を同時に兼ね備えた唯一無二の革がオイルレザーである」 なンて堅ッ苦しい事を言っても、きっと理解しないだろうし、原点に戻って(革ってなんだろう)を考えてみよう。

(1)不思議な日本人

約30年程前、<革>とは無縁な会社のサラリーマンだった筆者は、社命で欧州赴任となりパリに住むことになった。 半年、一年と経つうち、安パブ(バー)で知り合った20代前半のイギリス人、ベルギー人、イタリア、ドイツ、スペイン始め勿論フランス人等、同世代の友人たちが出来、酒を飲み乍ら互いの国の習慣や文化などを肴に語り合った。東洋人は私だけだったので、彼等はいつも珍しそうに、両手を広げる例のポーズでエキゾチックな情報を楽しんでいたようだ。

丁度その頃、日本は高度成長を果たし、SONY、SEIKO、TOYOTA、Panasonic、NEC等、技術の粋を集めた工業製品でヨーロッパ市場に参戦し製品の質の高さと価格の安さで市場を席捲し始め、「日本の経済侵略」が日常的に話題とされている環境であった。
しかし、我々日本人が、英、仏、独、伊、露など、それぞれの民族的特質を各国の小説や映画や音楽を通して知っていたのに対し、彼等は日本はもとより、アジアに対しては何の知識ももっていないばかりか、元々興味すら持っていなかったのだ。

そのような状況下、欧州人達の理解を超えた不思議な光景があった。例の<日本人お買い物ツアー>である。 ゾロゾロと隊列を組んだ女どもがヴィトンやグッチに入って行き、両手に袋を下げてゾロゾロと出て行くのである。その団体行動の奇異さも彼等の首を傾げさせるに充分だったが、更に驚かせたのが、買い物の中身である。 ゾロゾロ達は長い移動時間と高額なツアー参加費をかけて欧州に来て、ヴィトンやグッチに立ち寄り、何故か<革>を買わずに塩ビ製のBAGや布製、ナイロン製のものだけを選んで買って帰るのである。

何事にも興味を持つ若い友人達は筆者を質問攻めにする。
"何故ヴィトンでレザーBAGを買わないのか?""何故グッチのカーフ(仔牛)に眼を向けないのか?" "日本人は何故アクリル製品が好きなのか?""日本には石油化学工業はないのか?" "中東から遠くて石油が届かないのか?" "日本人はイタリアの文化を馬鹿にしている"etc.etc

しかし、彼等の質問に筆者はその時何も答えられなかった。

それどころか彼等の疑問の意味さえ分からなかったのだ。

(F)
──次号につづく─