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VOL27 ─良い革製品を考える(5)─

□□昨日のつづき□□

2003年7月5日号  VOL.027

──良い革製品を考える(5)──

 皮は鞣されて革となっても、毛穴を通して呼吸している。
空気や湿分を、取り入れたり吐き出したり、皮革繊維として最善な状態を、自然に保つようなメカニズムが、備っている。 革は生きていると言われる理由が、ここにある。

 しかし、革の表面に染料を吹きつけて、染料膜を作ってしまったら、この<呼吸>は閉ざされてしまう。  特に、内部に封じ込められた湿気は、逃げ場を失い、やがて、「カビ」の繁殖を生じる。又、空気の流入が無い革は、老化が進み、ヒビ割れする。

 従って、長い期間の使用を保証するためには、染色は水染めでなければならない。
だが、水染めには大きな欠点もある。 1枚(1頭)の革を、染料プールに漬け込み染め上げても、均等に染まらないと言う欠点だ。 ある部分は濃く、ある部分は淡く、言わば<色ムラ>が出てしまう。

 当然の事として、動物素材である革は、肩・背・腰・胸・腹などの部位それぞれの繊維密度が異なっている。 単純に言えば、皮フの柔かい部位も硬い部位もあるのが皮なのだ。染料の浸透し易い場所も、し難い部分も当然ある。  
同じ個体の革でも色ムラは当然あって当たり前だ。
まして個体が違えば、仕上り色は、一枚一枚、微妙に異ってくるのだ。

 必然的に、クレームを怖れる百貨店や、均質である事が前提の通販業者は、水染め革を扱いたがらない。
又、染色のコストも、加工する職人のコストも、吹き染め革に比べて相当割り高となる。  
結果、量産品に水染め革はあり得ない。

──同型同色のモノを2つ並べて
色差が無ければ水染め革ではない。──

                                   (F)
                             ──次号につづく─