☆☆☆ フリーハンド ☆☆☆
2010.10.07
━━ 祝! ノーベル賞 ━━
コラム「昨日のつづき」 VOL.67
昨日から今日にかけて新聞もTVもノーベル化学賞を受賞した鈴木先生と根岸先生の話題一色となっている。
有機化合物の結合方法の発見に寄与した功績が認められたものであるらしい。
この研究成果は、私たちの身のまわりの様々な所で利用される応用化学技術の基礎となっているようだ。
不況真っただ中の今、暗いニュースの洪水に久しぶりの何とも心温まる話題だし、経済力世界第2位の座から滑り落ちた事も、尖閣列島に於ける領有権問題で我らが選んだ為政者たちの狼狽ぶりを見るにつけ感じていた日本人としてのやるせないような屈辱感にも似た”もやもや”も一瞬忘れさせてくれるものであった。
ただ新聞紙面を詳しく読んで見ると、このカップリングと呼ばれる有機物結合方法の発見は1970年代に山本明夫・溝呂木勉・玉尾皓平など各氏をはじめとして、触媒を使ったクロスカップリングや反応は日本のお家芸も言える分野だったようだ。
今回の受賞対象となったパラジュームを使った鈴木章氏の研究発表も1979年の事だったようである。
私たち一般人が学術研究の成果に対するニュースに疎いのは当然であるかも知れないが、不安になるのはこの点で、
一体政府やマスコミはこれらの功績を正しく評価しているのだろうかと言う疑念である。
日頃使っている血圧降下剤や抗ガン剤、液晶テレビやソーラーパネルなど数多くのものが、このカップリング技術の応用だと言う事を
政府機関やマスコミが正当な称賛を与えてさえいれば、多少でも国民は知ることが出来たであろうと思えるのだ。
また、それらの上手な喧伝が子供たちに夢を与え自信を与え向上心を養う事にもつながるのではないだろうか。
日本人は何故か外国で賞讃されて初めて、同じ日本人に評価を与えているような気がする。
昔から欧米で評価されなければ国内では認められない風潮が有る。
音楽・絵画・映画は代表的なものだ。
洋服のデザイナーはパリコレに参加しているかどうかが才能の判断基準のようだ。
蛇足かも知れないが、皮革の鞣し技術・染色など加工技術は日本が世界の先端を走っている。
以前にも書いたが欧州から日本に技術研修に訪れる事は当然のようになっている時代だ。
しかし、日本の革は不当に評価されているように思える。
相変わらず、イタリア製フランス製の革を有り難がって高額な対価を支払う人は多いようだ。
必然、日本のメーカーは技術ごと中国などに移転して低価格なものを作らざるを得ない。
国立大学を卒業して革の加工技術を研究する道を選び、長時間の重労働に耐えている皮革研究者たちに対して
陽が当たるような社会に日本と言う国はなるのだろうか?
( F )