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VOL66 ―カシミアを考える(2)―

☆☆☆ フリーハンド ☆☆☆

2009.11.11

──カシミアを考える②──

コラム「昨日のつづき」  Vol. 66

 

 

(11.09の続き)

カシミア種山羊だけでなく、南米アンデス高地に棲息するアルパカやビキューナ、中央アジアのアンゴラ、西アジアのモヘア等々最高品質と呼ばれる獣毛は、彼らの育った気候風土にこそ特性が有ります。

この事はもう理解されたと思います。  動物を原材料とする製品は品種が貴重なのではなく、育った環境が価値なのです。

 

かつて、インド・パキスタンの紛争の時、パキスタンはカシュミールの一部を中国に割譲し、中国を巻き込むことで、この周辺の国境線を確定しないよう図り、実効支配している土地を領土とする事に成功しました。 この時、一部のカシミア山羊たちも中国の国民?になったのです。

「繊維の宝石」とまで言われたカシミアを、かの国の人たちは利益を生む家畜にする方法を考えたのでしょう。

 

10.31付このBBSで<蘭丸さん>がブルゴーニュワインの事に触れられていましたが、中世以降欧州圏を中心に、「産地主義」や「知的所有権」は互恵的な考えとして全ての人の了解事項でした。

英国の羊毛などはそれぞれの地域によって家々によって羊の育て方を競い、ウールの文化を作り上げて来ました。 格子柄の編み物は、その柄・配色によって生産地域が分かるほど、生産地自体が商標とされるような文化を熟成してきたのです。

日本でも京友禅・江戸紫・久留米絣・大島紬・結城紬など、それぞれの地域で研鑽を重ねた地場産業が有ります。

欧州圏でも日本でも、流行の中で売れている商品をコピーして販売する事は違法です。  生態系の仕組みを壊してまで利益を追求する事は本来は犯罪にも等しいのです。

法律が無いからと言って産地偽装する人はほとんどの国では一部の人に限られますし、まして国家的プロジェクトでなど想像の域外です。

前回、カシミア種山羊は6000万頭程度が世界の総数と書きましたが、この内カシュミール地方の総数は2000万頭です。

差し引き4000万頭と言う膨大なカシミア山羊が、元々の気候とは違う内モンゴルや外モンゴルで飼育されています。

 

最後に大きな問題点を1つ。

羊が草食(グレイザー)なのに対して山羊は芽食(ブラウザー)です。   つまり、羊は草原の草だけを主食にするのに対し、山羊は草だけでなく低木の木の芽を好みます。

木の芽で足りないと木の皮を剥いで食べてしまいます。 大量の山羊たちは草原中の木々を絶滅に追いやり草原中の草を食べつくし、草原を砂漠化させてしまいます。

広大な内モンゴル地帯は次々と砂漠化が進んでいるようです。   日本の面積の数倍もの土地が次々と環境破壊されているのです!

草一本生えない黄土は季節風に巻き上げられて北京や上海の空を覆い、さらに海を越して日本の国土にも降り注いできます。

黄砂は目に見えないウイルスを運んでいるのかも知れません。

 

金を儲ける事しか見えない、見ようとしない安売り洋服商人たちを私は許したくありません。 まして、事業上の成功者だと尊敬する気になど到底なれません!

そして生活防衛のためなどと言いながら、何の考えも無く安ものに群がる消費者の一団も、結局は加担者(共犯者)だと思えてなりません。     ( F )

 

 

 

 

 

 

(参考)──世界の一級品(カシミア・ストール編)──

 

ピアチェンツァはイタリア北部エミリア・ロマーニャ地方に有り、ミラノとパルマのちょうど中間くらいに位置しています。

古くはケルト人の支配する土地で、ローマ帝国以降南欧の要衝に有ったため19世紀半ばイタリアの統一までの間、支配者が次々と

変わるような変遷を経験してきました。   周辺に豊かな田園地帯を抱える事も有って、東ローマ帝国を始めナポレオンのフランス軍に

侵略されるなどの歴史の中で都市的な発展は妨げられたようです。

 

ピアチェンチーノと呼ばれる民族は数あるミラネーゼともパルマ地方の人々とも違って素朴な印象を感じます。

第一次十字軍発祥の地とも言われ歴史的な遺構も多く残っていますが、伝統的な地場産業も盛んで、フリーハンドが販売する「カシミア・ストール」は「PIACENZA」として多くの人々の憧れと信頼を勝ち取っています。

その「肌ざわりの柔らかさ」「目に映る光沢の美しさ」は世界の一級品と評価されるにふさわしい逸品です。

タグに入っている「1733」は、カシミアストールの生産を始めた年号で、当時の作り方そのままに品質を守り通しています。

フランス革命が1789年ですから何とも長い歴史です。  因みに「ジョルジオ・アルマーニ氏」はこのコムーネ(地方)の出身です。