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VOL29 ─良い革製品を考える(6)─

□□昨日のつづき□□

2003年8月5日号  VOL.029

──良い革製品を考える(6)──

 昨今、暗いニュースが続いている。「福岡一家四人惨殺」「東京女児誘拐監禁」などセンセーショナルな事件ばかりだ。 しかし、良く考えてみると、加害者側にも被害者側にも共通するものがある事に気づく。 それは<拝金主義>とでも言うのだろうか。
最早、日本の社会全体に浸透しつくした拝金思想は、少女達の心を蝕み、わずか4才の幼児にさえ、お金さえあれば満足が得られると思い込ませている事に愕然とさせられる。

 本来、至高な情熱であった学問の世界でも、産・学・官協同の名のもとに、研究の過程では無く結果ばかりを優先させている。 この国では「金」にならないとの理由で数学や基礎物理学を専攻する学生が少ないのだそうだ。 マスコミも「阪神優勝」の語句を商標登録するような人間を、頭が良いのなんのと、持ち上げないで欲しい。

 さて、今号のテーマだが、革の生産業界も日本全体を覆う思想に侵されていて、本質的な良い革を作ろうと努力していない。 否、作り方は知っているのだが、あまりに苦しい作業工程と、手間ひまのかかるコストに怖れをなして<タンニン鞣し><水染め>から離れてゆく。  先頃、日本国内最大手の某社が<タンニン鞣し革>の生産を停止した。 第2位メーカーも<タンニン革>から手を引きたがっている。
必然、この革の価格は高騰して行くだろう。

 消費者にも本質追求の欲求が無いため、<クローム鞣しのオイルレザー>だとか<シリコン樹脂加工のオイルレザー>と言ったマガイモノに騙されたり、<撥水加工>した革を単純にオイルレザーと信じ込んだりしている。又、それらが売れるから、製品製造メーカーは、尚更、本質を追求する努力をしないし原皮メーカーに要求さえしない・・・・・の悪循環が続いて行く。

                                   (F)
                             ──次号につづく─