----------------------------
□□昨日のつづき□□ 2002年11月25日号 VOL.007
□■メンテナンス・シリーズ
----------------------------
第5回 クローム革のお手入れ
クローム革は植物タンニン(シブ)で鞣した革とは異なり、三価硫酸クローム、六価クロームで鞣した皮革素材である。 端的に言えば、革の持つ本来的な丈夫な組成を壊して、安価にそして簡便に出来る様にしてある為、革本来の風合いは失われている。 言わば「死んだ革」とも言えるものであり、「気を使ってまめに手入れをしなければならない」という必要もない。
染色も金属溶液を使用している為、タンニン鞣しの染色時の様に、水性染料を使用して革の内部から染色していく方法がとれず、革の表面にペンキを塗る様に染色せざるを得ない。 この染料はミクロン単位の厚さで革の表層に定着しているのが通常であるので、革に傷がついたり、擦れたりすると、革の地の灰色が露出してしまい、色が元に戻ることは無い。 また、長年使用すると全体的に退色していくのも仕方がないことである。
このような染色をしている為、お手入れの際に揮発性のもの、浸透性の強いクリーナーは使用厳禁!!
揮発性、浸透性の強い成分を含む溶剤を使用すると、色落ちを起こすだけでなく表皮と真皮の間に薬剤が入り、表皮が浮き(吟浮き)あばた状になることがある。
クローム革はクローム溶液を含んでいる為、油を含まない皮革である。
したがって油分の補給をしても大した効果は無い。
汚れが気になった時は乳化性のクリーナーが比較的危険が少ない。
クリーナーは革に直接塗るとシミになりやすいので、柔らかい布によくクリーナーを馴染ませて、全体に一気に拭き上げる。 その後、クリーナーを拭き取る様に軽く空拭きをする。
軽い汚れであれば消しゴムタイプを使用しても良い。
但し、こすり過ぎると革の色落ちを起こしたり、革を傷めることがある。 また、消しゴムタイプを使用する際は、前もってゴムに汚れが付着していないか確認すること。 前回使用した時の汚れが残っていると、却って汚れを広げてしまうことになる。
クローム革は元々量産を目的に作られた革であるので、消耗品と考えて使用した方が良い。
但し、カーフ、キップ、シープ等を素材にした高級なクローム鞣しの革もあるのでその様な製品については、購入した販売店へ相談すると良い。
※クリーナー等を使用する際は必ず目立たない部分で試し、シミ等にならないことを確認してから行うこと。